論 文 の 執 筆     


◆はじめに

 論文の書き方について、少しばかり考えてみました。これから卒論や修士論文を執筆するような方を念頭においています。

 あくまで一例に過ぎないものです。マニュアルなどと思わないで下さい。

 大まかな流れをいえば、乱読、テーマの設定、先行研究の整理、構成の仮決定、史料の読解、論文の執筆、ということになるでしょうか。

 とはいえ、実際には、これらの作業を並行して行うことになるはずです。史料を読解しながらでなければ論文は執筆できませんし、新事実なのかどうかを先行研究で再確認することもあるでしょう。

 こうした流れについては、溪内謙『現代史を学ぶ』(岩波新書、1995年)が参考になると思います。



◆テーマの設定

 できるだけ普遍性のあるテーマを選びたいものです。

 ここでいう普遍性とは、周辺領域の研究者などを含めて、多くの方々に重要性を認めていただけるような分野に問題を設定していることです。

 とっかかりは小さな事でも、それをどこまで一般化できているかということでもあります。

 問題意識を深めるには、乱読、精読が不可欠な作業です。早めに課題を決定し、関連の本を読み進めましょう。

 テーマが絞れていないときには、まずは乱読することをお勧めします。



◆先行研究の整理―乱読から精読へ


 研究課題を決定したら、先行研究を整理してみましょう。

 主要な本から着手して、雑誌などに掲載されている論文にも目を通します。

 その際には、中央大学図書館総合目録NACSIS Webcat以外にも、国会図書館の所蔵検索や、中央大学の外部オンライン・データベースも利用して下さい。

 論文まで検索できるようになっており、大変便利です。

 論文で先行研究を検索するには、下記の要領となります。

   国会図書館の所蔵検索 → 「雑誌記事索引の検索」へ

   中央大学外部オンライン・データベース → 特に日外MAGAZINE PLUS

 これらに加えてCiNiiもあり、戦前期や地方史については皓星社雑誌記事が便利です。

 国会図書館では、登録すれば、オンラインで複写請求もできます。

 先行研究のほか、回想録などがないかも検索して確認します。

 先行研究によってどこまで明らかにされており、自分がいかに貢献できそうかを意識しながら、序論を書いていきましょう。



◆論文の構成

 
一般的には、序論、第1章、第2章、…、結論、参考文献、で構成されます。何章でも構いませんが、3章から5章ぐらいが目安でしょうか。

 序論では、問題の所在、先行研究の整理、論文の分析視角と構成、史料の保存公開状況、などを明示するとよいでしょう。

 第1章からの本論では、時期によって区分すると分かりやすいと思います。

 結論では、序論の問題提起を踏まえつつ、本論を要約します。今後の課題に論及しても良いでしょう。

 巻末には参考文献一覧表を付けて下さい。先行研究や資料集を編著者の50音順に列挙します。



◆刊行された外交文書を使う

 本論を書くには、当然ながら、史料を読まなくてはなりません。さしあたりは、次のような刊行された外交文書の各年版を手にとってみます。

    日  本 外務省編『日本外交文書』各年版
          外務省条約局編『条約集』各年版 中央図書館書庫J329.09/G15

    アメリカ  U.S. Department of State, ed., Foreign Relations of the United States (Washington) ← 電子版  e-book
          Department of State Bulletin

    イギリス R. Butler et al. eds., Documents on British Foreign Policy 1919-1939 (London)
          R. Butler et al. eds., Documents on British Policy Overseas (London)
          Kenneth Bourme et al. eds., Brisith Documents on Foreign Affaris (London)

    旧ソ連  Ministerstvo inostrannykh del SSSR ed., Dokumenty vneshney politiki SSSR (Moscow)

    
ドイツ   Akten zur deutschen auswartigen Politik, 1918-1945 (Gottingen)

 中国や台湾の場合、外交史関連の史料が各地に散在しています。主要なものについて、下記のキーワードなどを用いて大学図書館の所蔵を検索してみましょう。

    
中 国 中国第二歴史档案館、上海市档案館、遼寧省档案館
     台 湾 中央研究院近代史研究所、国史館、中国国民党中央委員会党史史料編纂委員会編『革命文献』

     その他 満洲国外交部
          興亜院政務部『調査月報』 1巻1号 (昭15.1)-3巻9号 (1942)

     韓 国 高麗大学校亜細亜問題研究所日本研究室編『韓日関係資料集』全2巻(ソウル:先人文化社、1997年) 総合政策学部図書室:ハングル/M319.2101/1255-1.2



◆マイクロフィルムなど


 マイクロフィルムなどで活用できる外交文書も少なくありません。著名なところでは、下記のものでしょうか。

   Adam Matthew Publications
   Scholarly Resources
   University Publications of America, Inc.

 
主要なものについて、下記のキーワードなどを用いて大学図書館の所蔵を検索してみましょう。

   United States. Department of State
   United States. Dept. of State
   United States. National Archives
   United States. National Archives and Records Administration
   United States. National Archives and Records Service
   United States. National Archives and Records Service. Far Eastern Commission
   United States. War Dept. Military Intelligence Division
   United States. Central Intelligence Agency
   National Security Council
   Congressional Information Service

   University Publications of America, Inc.

   McJimsey, George T.
   Merrill, Dennis

   アメリカ合衆国対日政策文書集成

   Great Britain. Foreign Office
   Great Britain. Public Record Office
   Foreign Office files for Japan and the Far East, ser. 2

   外交公報. -- [マイクロフィルム版]. -- 1号 (民国21 [1921])-82号 (民国31 [1942])
   外交月報. -- 1 - 10.
   時報 = Eastern times / 上海商務印書館 [編]

   League of Nations

 ご参考までに、早稲田大学所蔵マイクロフィルムのリンクを貼らせていただきます。



◆CD-ROM/ CD-R


 
CD-ROMなどで活用できるものも増えています。

   Asia : official British documents 1945-65 on CD-ROM : selected documents from the end of World War II to Vietnam / edited by Michael David Kandiah, Gillan Staerck, Christopher Staerck. -- : set, disc 1-4, disc 5-6. -- Routledge, 1999. w.

   国立国会図書館所蔵昭和前期刊行図書デジタル版集成. -- 社会科学部門 -- 丸善, 2000.9

   品田裕・福永文夫・井上正也編『国会議員データベース 自由民主党・衆議院議員編』(丸善、199-) 総合政策学部C314.18/Sh57



◆オンラインの史料・データベース

 
最近では、オンラインで閲覧できる史料やデータベースも増えています。

   アジア歴史資料センター

   国会議事録

   国立国会図書館『官報』 1952年までインターネットで公開しているようです

   官報情報検索サービス 戦後の『官報』をデータベース化したものです。大学図書館などで契約していることが多く、個人でも契約できます。


   「世界と日本」

   U.S. Department of State ed., The Foreign Relations of the United States (刊行されているアメリカ外交文書) → こちらも参照

   
National Security Archive  (情報公開請求で得られた史料をデータベース化したもので、主要な大学図書館などからアクセスできます)

   
UN Documentation Centre (中央大学図書館国際機関資料室も参照)

   
毛沢東文集

   
中国共産党新聞重要文献



◆原文書に触れる


 
刊行物はもちろん大切ですが、極力、原文書に触れてみたいものです。

 東京の史料館としては、外務省外交史料館国立国会図書館憲政資料室国立公文書館防衛省防衛研究所などがあります。

 個人文書については、近代日本史料研究会が参考になるかもしれません。

 とりわけ、現代の日本外交や国際政治を研究対象とするのであれば、外務省外交史料館でどこまで史料が公開されているのかを真っ先に確認する必要があります。

 あまり難しく考えずに、とにかく足を運んでみましょう。同じ史料でも、刊行物では情報量が落ちますし、原文書をみることで、想像力を養うこともできます。

 原文書の公開状況によって、論文の書き方は大きく異なってきます。

 史料状況との対話によって、研究テーマの微調整を重ねます。

 先行して公開されているアメリカ側の史料に依拠するという方法もあります。



◆外務省外交史料館を訪れる

 ここでは特に、外務省外交史料館の利用方法ついて、述べておきます。

 まず、『外交史料館報』が参考になります。工具類もご参照下さい。

 戦前の外務省記録については、外務省外交史料館編『外務省記録総目録』第1巻, 第2巻, 別巻(原書房、1992-1993年)という目録があります。

 多くは、アジア歴史資料センターで見ることができます。

 主要な外交文書は、外務省編『日本外交文書』として刊行されており、各大学図書館や外務省外交史料館で閲覧できます。

 オンライン版は、日本外交文書デジタルアーカイブです。

 『外交青書』・日米「密約」なども参考になります。

 史料集としては、下記のものが手もとにあると便利です。

   
外務省編『日本外交年表並主要文書』上下巻(原書房、1976-1978年)

   鹿島平和研究所編『日本外交主要文書・年表』第1、2、3、4巻(原書房、1983-1995年)

 戦後の外務省記録については、こちらをご参照下さい。

 戦前の外務省記録については、原本を閲覧できます。

 戦後については、多くがマイクロフィルムまたはCD-Rで閲覧することになりますが、原本も移管されてきています。CD-Rで閲覧するのは、第18回外交記録公開以降です。

 複写は可能です。全冊複写も認められており、マイクロフィルムで購入することもできます。第18回外交記録公開以降は、CD-Rで安価に購入できますので、便利です。

 ご参考までに、いくつかリンクを貼っておきます。

     外交記録公開  外交記録公開目録  外交記録公開文書検索  要公開準備制度



◆情報公開請求

 外務省外交史料館などで史料が未公開の場合には、情報公開という方法もあります。

 いくつか下記にリンクを貼っておきます。

     e-Gov  外務省情報公開  情報公開法に基づく開示文書  



◆オーラル・ヒストリー

 比較的最近のことを扱う場合には、当事者にインタビューを試みることもできます。

 代表的なオーラル・ヒストリーをいくつか挙げておきます。

    政策研究大学院大学成果物 → NACSIS

    防衛省防衛研究所 : 防衛庁防衛研究所戦史部編『中村悌次オーラル・ヒストリー』上下巻、2006年など

    Oral History Research Office, Columbia University

    National Security Archive U. S - Japan Project Oral History Program

    中央研究院近代史研究所口述歴史

 私が編集したものとしては、次のものがあります。

    森田一/服部龍二・昇亜美子・中島琢磨編『心の一燈 回想の大平正芳――その人と外交』(第一法規、2010年)

    栗山尚一/中島琢磨・服部龍二・江藤名保子編『外交証言録 沖縄返還・日中国交正常化・日米「密約」』(岩波書店、2010年)

    中江要介/若月秀和・神田豊隆・楠綾子・中島琢磨・昇亜美子・服部龍二編『アジア外交 動と静――元中国大使中江要介オーラルヒストリー』(蒼天社出版、2010年)

    中島敏次郎/井上正也・中島琢磨・服部龍二編『外交証言録 日米安保・沖縄返還・天安門事件』(岩波書店、2012年)



◆海外調査

 執筆時に誰もが頭を悩ませるのが、研究の独自性です。独自性には解釈と史料の両面があるはずです。どちらか一方が欠けても、インパクトは半減するでしょう。

 そのためか、修士論文の段階で海外調査に向かう方も少なくないようです。以下に、いくつかリンクを貼っておきます。

   アメリカ National Archives
         Manuscript Division, Library of Congress
         Hoover Institution, Stanford University
         Rare Book & Manuscript Library. Columbia University

   イギリス National Archives
         National Register of Archives

   中  国 中華人民共和国外交部档案館
         中国国家図書館
         遼寧省档案館
         吉林省档案館
         北京市档案館
         上海市档案館
         上海図書館
         図書館や档案館のリンク集

   台   湾 国史館
         中央研究院近代史研究所
         中国国民党中央委員会党史委員会
         台湾総督府档案

   
韓  国 外交安保研究院



◆海外調査―アメリカ国立公文書館を訪れる

2012年3月、久しぶりにアメリカのナショナル・アーカイヴスⅡ(NARA、National Archives & Records Administration)を訪れました。

 ナショナル・アーカイヴスⅡは郊外にあり、ワシントンの本館からシャトル・バスが朝8時から毎時1本、出ています。40分から50分ぐらいで到着します。

 最初にパソコンで登録し、カードを発行してもらいます。

 カードは期限が切れても、持参すれば延長してもらえます。

 登録の際に頼めば、自分のパソコンからワイヤレス・ネットワークに接続できるパスワードを発行してもらえます。

 パソコンやデジカメの登録は、不要となりました。

 地下のロッカーに荷物を預け、2階の閲覧室に向かいます。

 閲覧室では Finding Aid などを参考にしながら、slip と呼ばれる申請書に記入し、担当者に渡します。このとき、手渡しして承認を得る必要があります。

 申請書には、氏名、リサーチ・カード番号、RG(レコード・グループ)番号、書架住所、エントリー番号、シリーズ名、箱番号を記入します。

 例えば、1964年から1966年の防衛問題に関する国務省文書であれば、次のように申請書に記入します。

    RG 59  書架住所 250/5/25/1  エントリー番号(A1)01132A  シリーズ名 Subject Numeric Files 1964-66  箱番号 Boxes 1648-1649

 書架住所やエントリー番号は、Finding Aid の冒頭に記されています。

 記入方法が分からなければ、アーキヴィストに聞きましょう。

 数十分後に史料が出てきます。

 先ほどの例でいえば、箱には Central Foreign Policy Files, 1964-66, Box 1648 などと記されています。

 多くの訪問者が、RG 59 などの国務省文書、特に Central Foreign Policy Files を閲覧されると思います。

 国務省文書の体系は1963年に変更になっていますので、その前後でslipの書き方が異なってきます。

 1973年以降の国務省セントラル・ファイルは、AADというデータベースに外部からアクセスできます。

 史料のなかには、引き抜かれて閲覧できない文書もあります。

 最大24箱まで同時に閲覧できますが、別々に申請した文書の場合、一旦、返却してから、次の文書を受け取ります。

 これらについては、仲本和彦『研究者のためのアメリカ国立公文書館徹底ガイド』(凱風社、2008年)が詳細な案内になっています。

 デジカメ、複写機、スキャナーで複製する場合には、許可を得る必要があります。

 スタッフのいるカウンターに箱ごと運んで、撮影したい文書を示せば、大抵すぐに許可が得られ、番号の入った小さな許可書を渡されます。

 帰りもシャトル・バスが、ナショナル・アーカイヴスⅡからワシントンの本館に毎時1本、出ています。

 道が空いていれば、帰路は往路よりも早く到着するようです。

 訪問前に以下のデータを参照しておくと、調査が円滑に進むと思います。

    U.S. Department of State ed., The Foreign Relations of the United States (刊行されているアメリカ外交文書) →こちらも参照

    
National Security Archive (情報公開請求で得られた史料をデータベース化したもので、主要な大学図書館などからアクセスできます)



◆海外調査―中華人民共和国外交部档案館を訪れる

2010年12月から翌年1月、中華人民共和国外交部档案館を訪れました。

①メールで訪問を連絡しましたが、回答はありませんでした。

②このため、事前に電話して訪問予定を告げ、年末年始の開館日程を確認しました。

③年末年始の開館日程は、次の通りでした。

  12月27日(月)~30日(木) 開館

              31日(金) 午前のみ開館

    1月1日(土)~3日(月) 閉館

                 4日(火) 開館

④閲覧時間は、次の通りです。

   月曜日から木曜日 8時30分から11時30分 13時から16時。

         金曜日 8時30分から11時30分 (午後は閉館)

時間になると、自動的にパソコンの画面が初期化されます。

⑤档案館は、外交部南楼6階にあります。1階で簡単なセキュリティーチェックを受けます。

⑥6階の档案館では、大学からの紹介状を提出しました。

⑦壁際にあるロッカーに荷物を預け、鍵の番号をカウンターで紙に記入します。

⑧席に向かい、パソコン上の「閲覧読者注冊」で登録します。連絡先やパスポート番号のほか、「密碼(暗証番号)」を自分で決めます。研究内容を20字以上で入力します。

⑨「閲覧読者注冊」が終わると、「卡号(閲覧者番号)」が発行されます。2010xxxxというものでした。「密碼(暗証番号)」と「卡号(閲覧者番号)」は控えておきましょう

⑩「卡号」と「密碼」でログインすると、外交部档案の検索画面にアクセスできます。キーワード、档号、国別、年代などで検索します。

⑪キーワード検索では、Ctrl+Shiftで文字入力に切り替わります。「ピンイン入力→スペースキー→左右の矢印」で漢字を指定できます。

⑫現物ではなく、デジタル化された文書をパソコンで閲覧する形になります。

⑬外交部档案は、1965年まで公開されていました。

⑭複写は大きく制限されていました。パソコンは持ち込み可でした。

⑮閲覧席は32席あります。利用者は、1人から5人でした。

⑯2日目からは、⑩から始めることになります。その前後にカウンターでパスポートを提示し、「批准(閲覧許可)」を求められることもあります。



◆海外調査―上海市档案館を訪れる

 2011年1月、上海市档案館を訪れました。

 中華人民共和国外交部档案館よりも、新しい時代の史料が公開されていました。

 1972年9月、田中角栄首相らが上海を訪れたときの史料も公開されていました。

 史料によりますが、デジタル化が進んでいて、複写も円滑でした。



◆海外調査―中央研究院近代史研究所档案館を訪れる

 2010年11月、台北の中央研究院近代史研究所档案館で戦後外交部档案を閲覧いたしました。

 多くがデジタル化されていました。

 すでに大勢の方々が閲覧されていると思いますけれども、ご参考までに、近代史研究所档案館で戦後外交部档案を閲覧する方法は次の通りでした。

①事前に訪問予定であることをメールでお知らせしたところ、先方からエクセルファイルが送られてきましたので、閲覧予定の档案名などを記入して、メールで返送しておきました。

②その際の档案名などにつきましては、ホームページからダウンロードできます。

③対日関係について調べたいのであれば、「亜太司(アジア太平洋局)」→「日本」をクリックします。

④近代史研究所档案館では外交部档案のデジタル化をかなり進めていて、多くは閲覧室のパソコン上で閲覧することになります。

⑤閲覧した1950年代から1970年代の対日外交については、すべてデジタル化されていました。

⑥事前に閲覧予定とメールでお知らせした以外の史料についても、その場で備え付けのパソコンから申し込めば閲覧できました。

⑦複写は各ファイルの半分まで許されます。

⑧複写は紙媒体で出てきます。

⑨デジカメ撮影についてはお聞きしませんでしたが、おそらく不可だろうと思います。

⑩年間1000枚という制限があるものの、円滑に複写できました。

⑪複写料金は、1枚当たり3元(約10円)でした。

 10数年前、台北北郊の中華民国外交部档案庫所蔵で原文書を閲覧させていただいたころと比べると、隔世の感を否めませんでした。

 拙著『日中歴史認識――「田中上奏文」をめぐる相剋 1927-2010』(東京大学出版会、2010年)で使用した史料も、便利に見られるようになりました。

 台湾の院生と思われる方々などが、早朝から夕方まで熱心に文書を読み込まれていました。



◆海外調査―国史館を訪れる

 2010年11月、台湾の国史館を訪れました。

 ここでも多くがデジタル化されていました。

 以下では一例として、デジタル化された史料を探す方法をご紹介しておきます。

国史館のトップページ「進入」をクリックする。

②左側にある「学術資源検索」をクリックする。

③3番目の「数位典臧資料庫」をクリックする。「数位」とはデジタルのことです。

④「進階査詢」で検索したり、「瀏覧査詢」でブラウズしたりできます。

⑤そのほか、「国史館館臧史料文物査詢系統」→上部右から3つ目の「進階査詢」と進み、「不限欄位」にキーワードを入れることなどでも検索できます。そのとき、「史料類別」の「全選」などにチェックが入っていないと検索できません。また、「全宗号/名」で「国民政府」「蒋中正総統文物」などを特定することもできます。

⑥検索によって、「入臧登録号」(コード番号)が表示されると思います。

⑦現地では、パソコン上で「入臧登録号」をコピーして、先の「不限欄位」に貼ると、パソコン上で史料を閲覧できます。

⑧デジタル化されていても、複写できないものがあります。

 分かりにくい説明になってしまったかもしれませんが、以上です。



◆文章化する

 史料を読解しながら、本論を書いていきます。

 先行研究や史料を引用した場合には、必ず注を付すようにしましょう。例えば、以下のようにします。

      
臼井勝美『日中外交史研究――昭和前期』(吉川弘文館、1998年)18頁。

 
独特な表現は避けた方が無難です。自分で気に入っている表現ほど、読者に違和感を与えやすいものです。

 優れた文章とはいかなるものか、一概にはいえませんが、谷崎潤一郎『文章読本』(中公文庫、1996年)などが参考になるかもしれません。

 
表記については、各種の用字用語辞典を繰り返し参照し、できるだけ読みやすいものを用います。

 「頃」と漢字で表記するのか、「ころ」と平仮名にするのかといったことは、統一されていなければなりません。

 用字用語辞典に記入するなどして、ばらつきが生じないようにしましょう。第一法規中央公論新社共同通信社などのものがあります。

 
長ければ優れた論文になるわけではありません。論旨が明快となるような文体を心掛け、何度でも手直しましょう。

 読み手を意識し、特別な知識がなくても読めるように書きたいものです。

 
研究者を志した以上、だれもが不可欠と認めざるをえないような分野において、新たなるスタンダードを1つは築いてみたいものですね。